デジタルヒューマンによるライブコマース、ブームとなるだろうか?

2024-09-03 09:17:00

深夜、ライブコマースの配信サイトにアクセスすると、数十時間連続で配信をしているにもかかわらず元気いっぱいのライブ配信パーソナリティがいて、よどみなく商品をすすめ続けるとともに、商品の特徴を繰り返し説明しながら、その合間に視聴者との双方向のやりとりも忘れない、ということがある。画面の隅っこにある小さな文字を見なければ、この疲れることを知らないパーソナリティが実はデジタルニューマンだとはなかなか気づかない。

最近、「デジタルヒューマンのライブコマース」のコンセプトに再び注目が集まり、多くのトップクラスのプラットフォームが次々にデジタルヒューマンのパーソナリティを打ち出している。人工知能(AI)技術のサポートの下、低コストのデジタルヒューマンはEC業界の新たな競争分野になった。

場所が不要、事前のリハーサルも不要、内容を大まかに入力すれば、すぐにライブ配信が始められる。大量に、低コストでパーソナリティを「製造」する時代がすでにやって来ている。

調査会社・天眼査によると、2023年にはデジタルヒューマン・バーチャルヒューマン関連の企業が99万3000社以上に達し、そのうち40万社あまりは23年に設立されたもので、成長率は前年同期比で42.3%に達したという。

今年のショッピングイベント「618」の期間中、多くのECがデジタルヒューマンをPRの手段として利用した。京東のデータによれば、同社のデジタルヒューマン「京東雲言犀」は5000を超えるブランドの配信サイトに登場し、ライブコマースをした時間は累計40万時間を超え、視聴者は延べ1億人を超え、双方向のやり取りの回数は延べ500万回に達した。

市場調査会社の艾媒諮詢(iiMedia Research)のデータでは、23年に中国のデジタルヒューマンが牽引した関連産業の市場規模とコア市場規模はそれぞれ3334億7000万元(1元は約20.6円)、205億2000万元で、25年になると、それぞれ6402億7000万元、480億6000万元に達する見込みだ。

中国伝媒大学が発表した24年中国バーチャルヒューマン・デジタルヒューマン影響力指数報告によると、AI技術が幅広く応用されることにより、デジタルヒューマンの双方向コミュニケーションの能力、コンテンツ生成能力、スマート化レベルが極めて大きく向上した。同大報道学院の沈浩教授は、「将来的には、デジタルヒューマンはAI技術が具象化した担い手になる可能性があり、より多くの分野で重要な役割を果たすものと期待される」と述べた。

天津霊境智遊科技有限公司の責任者の程洪志さんは、「少なければ数千元でバーチャールキャラクターの総合的な設計をすることができる。これに一般的なライブ配信設備を合わせても1万元未満だ。デジタルヒューマンによるライブコマースはクリエイティブで革新的、コストを抑えられるなどの優位性があり、中でも業者が最も注目するのはコストの安さだ。人間のパーソナリティのチームであれば育成の費用やギャラが必要だが、デジタルヒューマンのライブコマースはパソコン1台と運営者1人のみで、コストを大幅に引き下げることができる」と説明した。

デジタルヒューマンの優位性は明らかだが、実際にライブコマースに投入すると、なかなかなじまない部分があることも確かだ。デジタルヒューマンのライブコマースの画面には、「なんだか変な感じがする」、「パーソナリティは生身の人間なのか」といったコメントがあふれかえり、多くの視聴者の心の声が目に見える形で現れる。より重要なことは、視聴者の気持ちに寄り添うという人間のパーソナリティの役割を、デジタルヒューマンが代わって果たすのは難しいということだ。

また上海澄明則正(北京)弁護士事務所の劉慧磊弁護士は、「従来のライブコマースと異なり、デジタルヒューマンが加わることで法的責任がどこに帰属するかが曖昧になる。法律の実践の中で、製品そのものの生産者、経営者と、AIデジタルヒューマンの運営者、技術提供者の製品に対する責任での立場の違いを明確にし、責任の境界線を明確にしてはじめて、消費者の権利が効果的に保護される上、技術の良好な発展を導いていくこともできる」と述べた。

程氏は、「ライブコマースプラットフォームは目立つ場所に消費者に向けた注意事項を明示するとともに、デジタルヒューマンであることの告知などをライブコマースの必要事項に組み込み、元から利害関係者を制約することが必要である一方で、ライブコマースの運営者の資格審査を強化し、関係者のブラックリスト制度を構築し、デジタルヒューマン技術を利用した『顔変え』という状況を減らす必要がある」と提起した。(編集KS)

「人民網日本語版」2024年9月2日