神秘の大峡谷越えて出会う少数民族の熱いおもてなし

2024-10-21 10:27:00

湖北省の南西部には、山々に囲まれた秘境がある。ここでは、険しい崖壁が雲を突き、峡谷の中にある地下水流は神秘的な青色をたたえている。山に沿って建てられた吊脚楼(ちょうきゃくろう)(高床式住居)では古くから少数民族が生活しており、その情熱的な気風は訪れる全ての旅行者に感動を与えてきた。ここは恩施トゥチャ(土家)族ミャオ(苗)族自治州(以下、恩施)。SNSの普及とともに、この山奥の静かな地は、多くの人々の心の中の「桃源郷」となった。今回の「美しい中国」では、この青々とした山々と清らかな水の間にどんな物語が隠されているのか、一緒に探ってみよう。 

大地の裂け目を行く 

「この世の仙境」。これが多くの人が恩施に対して抱く最初のイメージだ。この印象は各種SNSで共有されている屏山峡谷の谷底に延びる一筋の青く澄んだ清江に由来する。ガラスのように透き通った湖水は、底まで見えるほどに清澄で、水面には一筋の波紋もなく、まるで巨大な垂直の峡谷の底にはめ込まれた宝石のように輝いている。水面に浮かぶ木舟はまるで空中に浮遊しているかのようだ。 

恩施は地質学的な奇観の宝庫で、湖北省、重慶市、湖南省の境界に位置する。大部分が山地で、地形は複雑だ。「二つの山が目と鼻の先にありながら、行き来に半日かかる」のがここでは日常茶飯事。このような地形は、1億3000万~7000万年前の地殻変動によって形成されたもので、恩施を縦横に貫く三つの山脈が絶えず隆起し、互いに圧迫し、風霜雨雪や流水による長年の風化と浸食を経て、やがて恩施の「骨格」を形作った。峡谷が無数に存在し、深く刻まれた溝はまるで神が大地に刻んだ裂け目のようであり、今日の恩施に壮麗な景観をもたらしている。 

早朝、峡谷の裂け目から差し込む最初の陽光がこのいにしえの大地を照らす中、私たちは屏山峡谷の旅を始めた。ロープウエーに乗り、厚い雲海を突き抜けて山頂に到達する。観光客は、険しい崖に築かれた曲がりくねった桟道を下りながら進む。大峡谷の崖端に立ち、耳元を吹き抜ける風を感じ、足元に広がる深淵を見下ろすと、その圧倒的な迫力に胸が高鳴る。そして、目を上げると、世界を一望するような壮大な景色が広がり、その美しさに思わず息をのむ。雲が立ち込め、また散る中、足を止めて振り返ると、桟道の上部が雲に覆われており、まるで天からつながる一本道を降りてきたかのように錯覚する。 

山の麓に降り立つと、観光客は小舟に乗って観光エリアを後にする。舟は峡谷の裂け目を進むが、峡谷は狭く曲がりくねっており、進むたびに前方にそれ以上空間がないように感じる。しかし、少し曲がると、また突然視界が開けるのだ。まさに「山窮水尽(みち)なきを疑い、柳暗花明また一村」のごとしだ。 

屏山大峡谷のほかに、恩施大峡谷もまた独特の感動を与えてくれる景勝地だ。「八百里清江、八百里画廊」と称されるように、恩施の母なる川である清江は恩施を貫き、全長423のうち最も美しい絶景を恩施に残している。それが恩施大峡谷だ。視界を覆う巨大な岩壁の背後には、多くのポノール(吸い込み穴)があり、そのポノールは地下水流とつながり、迷宮のような世界を形成している。現在、恩施大峡谷で発見された地下水流は70を超えており、世界的にも非常に珍しい。また、長江と清江の流域を分ける分水嶺では絶壁から水が流れ落ち、大小10カ所以上の滝を形成し、恩施大峡谷の大きな見どころの一つとなっている。 

恩施大峡谷で道を歩いていると、「『一香』にはどう行けばいいですか?」と尋ねる声をよく耳にする。「一香」とは何だろうと首をかしげていると、その正体は恩施大峡谷の果てに現れた。雲霧の中、一筋の細長くそびえる石柱が天を突き刺すように立っている。この「一香」は、2億5000万~2億3000万年前に形成されたもので、高さ約97、最も細い部分の直径はわずか4だ。風に吹かれても倒れず、雨に打たれても崩れず、群峰の中に何千年も誇らしげに立ち続け、この神秘的な地を守り続けている。「伝説では、この石柱は天神が恩施の民に贈った神のお香であり、災難に見舞われたときに火をつけると、天神がその煙を見て救いに来てくれると言われているんです。だから、私たちはこれを『難香』と呼んでいます。雲霧が立ち込めると、まさに香をたいて天神に祈りをささげているようです」と、峡谷で土産物店を営む地元のお年寄りが教えてくれた。 

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