憧れの人
頼海石=文
鄒源=イラスト
大学入試に失敗し、としていた息子が、同級生と数日間遊びに行った。戻ってきた時、一人の同級生を家に連れてきた。
私は息子がちょうど人生の重要な岐路にいると思い、彼の気持ちを確認しておく必要を感じていたので、息子に聞いた。
「どうするつもりだい?」
「来年もう一度受けようと思う」
「もし来年も受からなかったら?」
息子は黙り込んだ。
「お前のことはいったん置いておいて、先に父さんの話をしよう。お前は父さんが成功していると思うか?」
「もちろん。父さんは人がうらやむ地位にいるし、よく新聞や雑誌に作品を発表して、作家で詩人という肩書きもあるじゃないか」
「多くの人の目には、確かにお前の言うように映るだろう。でも父さんは詩集を出したいと思っているけど、そのお金が出せない。誰も私の無念さを知らない」
息子は何も言わなかった。
「私が高3のとき、劉日雄という山から来ていた同級生がいて、家は貧しかったけど、成績がとても良かった。私が一番のときもあれば、彼が一番のときもあり、代わりばんこにトップを取っていたよ。私たちはどちらも希望する大学に受かった。けど、後に劉日雄は結局大学に行かなかったことを知ったんだ」
「どうして?」
「金がなく、学費が出せなかったんだ。彼はおんぼろの三輪車を買い、街を歩き回って廃品回収を始めた。後に彼が『ごみ大王』となり、廃品回収会社をつくるなんて誰も思い至らなかった。お前に言いたいのは、つまり、力さえあれば、どんな状況であろうとも、事業を成功させることができるということだ。私は劉日雄を尊敬していて、私にとって憧れの人なんだ」
息子の同級生が突然クスクスと笑い始めた。
「おじさん、あなたの言っているのは、僕の父さんのことだよ。あなたたちは本当に面白い。僕の父さんもあなたに憧れているから、お互いのファンってところだね」
「本当かい?なんて偶然なんだ」と私は驚いた。
「本当だよ。父さんはいつもあなたのことを言っている。仕事が忙しく、付き合いも多いだろうに、いまだ文学に情熱を燃やし、しょっちゅう新聞や雑誌に作品を発表していて、尊敬しているって。父さんも学生の頃は詩を書いていたけど、後にあれやこれやでまったく息つく暇もなく、それ以来書いていないそうだよ」
「お父さんの電話番号を教えてくれ、時間があるとき、訪ねに行くから」と、私は感激して言った。
そして、電話をし、微信(中国版LINE)に追加し、会う日にちを決めた。会ったとき、私は言った。
「あのとき、君と僕とは優劣がつけ難かったから、君の家が大変じゃなかったら、君も名門大学を卒業していただろうね。でも話を戻すと、もしそうだったら、億万長者がこの世から一人減ることになる」
「皮肉らないでくれ。もし本当にそうだったら、この世に著名作家・詩人がもう一人増えていたかもしれないし、その方が良かったかもしれない」
「よせよ、僕が今どれだけ無念に思っているか知らないだろう。詩集を一冊出したいと思っていても、その金がなくて頓挫しているんだから」
「大したことじゃない、僕が出すよ」と、劉日雄は言った。
「考えさせてくれ」
「考えることなんかないじゃないか、もし気が済まないと思うなら、僕の名前も載せて二人の共著にすれば、僕も君にあやかれる」
数日後、私は微信で劉日雄に、詩集を出すのは諦めたと告げた。
(2022年発表)
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