婚礼
婚礼 王挙芳=文 鄒源=イラスト 夏の真っ盛り、畑のスイカも順調に成長し、4番目の叔父は丸々とした大きなスイカを眺めながら、スパスパとタバコを吸っていた。スイカを売り払い、白菜を植えれば、この2シーズンの収入で息子に立派な結婚式をさせてやれるはずだ。このように考え、やれることはやっておこうと、小さな空き地を耕し、白菜の苗を育てる準備をした。 この叔父は現状に甘んじない農民だった。農業ではろくな収入にならないと、他の人はみな都会に出稼ぎに行ってしまったが、彼は耕す人のいなくなった土地を安く借りてスイカを育て始めた。計算してみると、スイカで出稼ぎと同じくらいの収益を得ることができた。 今まではスイカを育てた後は、土地を休ませ、おばさんと一緒に家事をしたり、小屋にいるブタを外に出したりしていた。 しかし、今年は息子が間もなく結婚するので、結婚相手が何も要求していないとはいえ、みすぼらしい婚礼をして、息子に同級生や友人の前で恥をかかせるわけにはいけないと考えていた。 叔父は畑のスイカを売り払うと、すぐに整地して、事前に育てておいた白菜の苗を植えた。 白菜は叔父の気持ちをくみ取ったかのように青々と育ち、緑のじゅうたんが広がっているかのようだった。 彼は毎日畑に行って、水をやったり、肥料をやったり、虫を取ったりした。 白菜も頑張って、どれも大きくしっかり育った。「この調子だと、白菜もいい値段で売れるぞ」と彼はほくそ笑んだ。 しかし、お天道様が叔父をからかっているかのように、白菜はぱったり売れなくなった。畑いっぱいの白菜を誰も買ってくれず、叔父は焦った。 息子の結婚式の日がどんどん近づいてくるのに、畑の白菜は減らず、別の方法も思い付かずに、その白菜を眺めながら、スパスパとタバコを吸い続けるしかなかった。 息子が家に戻ってきて、「結婚式は形だけのものだから、簡単でいい」と言った。 「でもあの娘は都会の人だから、結婚式があまりにみすぼらしければ、今後お前は肩身が狭くなるよ」 「家で結婚式を挙げようと思っているんだ」 「それはいけないよ」。息子の言葉に叔父は即座に立ち上がった。 「家で結婚式をすると、相談して決めたんだ。明日あさってくらいに畑の白菜を収穫し、結婚式の日にそれを包んで、来た人に持ち帰ってもらうというのはどう?」 結婚式はとても簡単に行われ、披露宴にやって来たのは、親戚や友人、ご近所さんだけだった。息子とその嫁は祝儀を受け取っても、手を付けずにそれを返し、来たお客さん全員に喜の字を貼り付けた白菜をプレゼントした。 叔父は息子の嫁に言った。 「申し訳ないね。こんな結婚式しかできず、つらい思いをさせてしまって」 すると、息子の嫁は言った。 「お義父さん、とても素晴らしい結婚式だったわ。白菜はお義父さんお義母さんがくれた一番すてきな結婚式の贈り物よ。白菜には『共白髪、財運到来』の意味があるじゃない。これから生活がどんどん良くなるに違いないわ」 叔父が吸うタバコのかすかな光が、目に浮かんだ涙を輝かせた。 翻訳にあたって 白菜は中国語で「バイツァイ」と読み、たくさんの財産という意味の言葉「百財」と同音で、そのために財運が良いことを寓意する。また、結婚のお祝いの言葉「白头偕老」は、共に白髪になるまで添い遂げることを意味し、日本語では「共白髪」と言われる。この長寿と夫婦円満を願う言葉も白菜の「白」とつながるため、白菜は「共白髪、財運到来」を象徴している。 (福井ゆり子)
上一页1 |